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東北ILC推進協議会

FAQ

■ 意義

ILCの目的は何ですか?

科学的にはどのようにして宇宙が生まれ、物質が生まれたのか、という人類が長年抱いてきた謎の解明に挑むことです。また、ILCの技術を使った応用範囲は、医療・生命科学から新機能の材料・部品の創出、情報・通信、計量・計測、環境・エネルギー分野まで、非常に多岐にわたると考えられており、新たな産業イノベーションの創出が期待されています。

 

■ ILC建設に関して

ILCはどこに建設されるのですか? 

ILC は巨大な加速器で、建設コストも大きいため、世界にひとつだけ建設することになっています。これまでに、日本を含む世界各地(米国のシカゴ、スイスのジュネーブ、ロシアのデュブナなど)でILC 建設が検討されてきましたが、現在では、世界の研究者コミュニティの建設候補地は日本の北上山地のみとなっています。

文部科学省では、ILC に関する有識者会議を設置して日本誘致について本格的に検討を行っています。また、欧米の研究者コミュニティからも日本でのILC 建設をサポートするとの公式声明が出されています。ILC を建設するには、しっかりとした固い岩盤があることが理想的であり、日本国内では、研究者による評価で北上山地(北上サイト/岩手県・宮城県)が最適な場所だと発表されています。

北上山地には約50 キロメートルにもおよぶ固く安定した花崗岩帯があり、活断層も見つかっていません。日本で地盤の常微振動が最も小さな地域です。国際的な研究組織では北上サイトに限って検討を進めております。

 

ILCの推進体制・研究所について

ILCはどのような体制で研究開発を推進しているのですか? 

2012 年末まで、加速器の開発に関しては、国際将来加速器委員会(ICFA)の下で、国際共同設計チーム(Global Design Effort: GDE)が中心となって、また、測定器と物理研究はILC 物理実験管理組織(RD: Research Directorate)が中心となって研究開発が進められてきました。

2013 年2 月に、ICFA の下に世界のリニアコライダー研究に関する全ての活動をカバーする新組織リニアコライダー・コラボレーション(LCC)が発足し、GDE とRD の活動を引き継ぎました。

このように、ILC は、国際チームがその建設や運転を管理・運営していきます。

 

ILCの運用について

ILCはどのくらい電力をつかうのですか? 

ILC の電力使用量は、第一期(約20 キロメートル加速器)の運転で12 万キロワット、30 キロメートル延伸時で16 万キロワットとなっており、現状の電力供給で十分まかなうことができると確認されています。(東北電力の電力最大供給量約1,500 万キロワット に対して約1%)

また、ILC は、電力供給が多い夏期や厳冬期は稼働を停止(メンテナンス期間を兼ねる)する予定であり、これ以外の時期でも、電力不足が予想される場合には、随時運転を停止するなど、地域の電力が不足するようなことが無いように計画されています。

 

安全・環境への影響など

2013年にJ-PARCの加速器施設で事故が発生しましたが、ILCでも事故が起きる可能性があるのですか 

茨城県東海村のJ-PARC(大強度陽子加速器施設)では、内部構造を持つ比較的質量の大きな「複合粒子」である陽子を金でできた標的に衝突させ、そこで生成される粒子を用いた実験を行っています。衝突させるもの同士が、比較的大きな質量を持つと、その衝突によって標的の中には原子核の同位体が生成され、その中には多くの放射性同位体(放射性物質)も含まれます。

J-PARC の事故では装置の誤作動により過大なビーム電流が流れ、金の標的一部溶融したものと考えられています。さらに、標的が容器で密閉されていなかったため、放射性物質が実験室に拡散しました。重大事象と認識されず、フィルターがない排気ファンをまわすという操作により外部にも漏洩しました。

ILC において、直接ビーム照射を受けるものには陽電子標的とビームダンプがあります。陽電子生成の方法として、アンジュレーターという装置で発生させた光を標的に照射する方法と、直接電子ビームを照射する方法が検討されています。いずれも過度な熱負荷とならないように設計され、異常がある場合はビームが停止します。さらに陽電子標的は真空容器内に密閉された構造となっており、万が一に標的が溶融するような想定においても放射性物質が外部に拡散することはありません。ビームダンプも同様の構造としています。

このように、ILC ではJ-PARC と同様の事故が発生する可能性は非常に低いと考えていますが、あらゆる事態を想定し検討を重ね、どのような場合でも確実に対処できるように世界の研究者と協力して最大限の注意を注ぎます。

ILC の国際共同設計チームは、2008 年に基準設計報告書を発表しましたが、報告書の作成にあたっては、世界のどの国に建設されるか未定であることから、こうした考えを盛り込み、建設可能性のある全ての国の規制/法令に基づいて設計が行われました。

万が一事故が起こったときに備えて、放射性物質の外部への放出を最小限にするように、設備、管理体制を構築します。管理・連絡体制の構築、運用方法の確立、事故時の対処等については、準備段階からあらゆる方面の理解と合意を得ながら検討を進めることになります。

 

ILCの運転中には放射線が発生するのですか? 

ILC の加速器トンネル内は、加速器の運転中にビームが加速器を構成する物質などと衝突したときに放射線や、放射能が発生する場合があります。したがってトンネル内は放射線管理区域として厳重に管理されます。ただし、放射能の新たな発生は、加速器の運転停止とともに停止します。

また、ILC の衝突点では「電子」と「陽電子」が衝突しますが、その衝突反応の結果、新たな素粒子が発生します。ただし、測定器及び地下の実験室を取り囲むコンクリートや岩盤で止まってしまい、外(地上)に出ることはありません。陽電子標的とビームダンプは最も放射線が多く発生する場所ですが、専用の遮へい体をおいて周囲への影響を抑えます。ILC 加速器の大部分を占める主加速器では、ビームの衝突が無いので、これによる放射線が発生することは少ないです。

 

発生した放射性物質が外に漏れ出すことは無いのですか 

加速したビームが金属や水に衝突する陽電子標的とビームダンプでは放射性物質が生成しますが、ILC 加速器の大部分を占める主加速器では、放射性物質が生成されることは少ないです。ILC では放射性物質が外に漏れ出すことが無いように設計・管理・運用されます。ビームダンプでは、実験で使い終わった電子や陽電子のビームを水で止めますが、この水の中にトリチウムが生成します。このビームダンプの水は地下のビームダンプ室内の配管中に閉じ込められ、二次冷却水(非放射化水)とは熱交換器を挟んで分離します。このビームダンプ室内の水や空気は特に厳重に管理されます。ビームダンプ容器は金属製でその部分も放射化が生じますが、固体なので放射性物質が外に出ることはありません。

主加速器では、ビームの衝突が無いので、トンネルの空気は放射性物質を含みませんが、念のために、地下からの長いアクセストンネルまたは排気ダクトを経由し、放射性の塵埃を捕集できる排気フィルターを通して排気します。排気中の放射能濃度は空気モニターにより監視されます。

一方、周辺の放射線量は放射線モニターにより常に監視されます。このような対策によりILC から放射性物質を外に漏れ出さないように運用していきます。

 

ILCで起こる可能性がある事故にはどのようなものがあるのですか

【ヘリウムの漏洩】ILC の高圧ガスに関する安全設計では、最悪事態として、ビームの制御機器の誤作動等による電子ビーム直射によって、加速空洞または冷却用液体ヘリウム容器部分に孔があき、液体ヘリウムが漏洩することが心配されます。この液体ヘリウム容器部分へのビーム直射を防ぐ基本対策として、コリメーターと呼ばれる障壁をビームライン上流の各所に設け、空洞および液体ヘリウム容器に直接ビームが当たることを防ぐ設計になっています。ただし万が一、なんらかの要因で容器からの液体ヘリウムの漏洩が起きた場合には、容器の外に出た−271℃の冷たいヘリウム液が蒸発して気体となり容積が膨張します。 これによって気体の圧力が上昇すると、安全用のバルブ(蓋)が自動的に作動し、専用排気ラインまたはトンネル内に排出されます。このため、加速空洞を収納するクライオモジュール(兼真空容器)が大気圧を大きく超えて加圧されることはありません。ヘリウムは水素に次いで軽い原子なので、トンネル上部の排気経路およびダクトを通して安全に地上に排気されます。地上に排気されたヘリウムは、すぐに上空から宇宙に向けて上昇します。またヘリウムは不燃性ガスであるため、発火による爆発の心配もありません。

【人の誤侵入】また、最も気をつけなければならないことは、加速器の運転中に誤って加速器トンネルの中に人が取り残されたり、入ってしまうことです。加速器の運転中には、放射線が放出されるため、加速器トンネルは放射線管理区域として厳しく管理されます。

現在稼働している加速器でも、教育訓練を徹底し、トンネルの出入りには加速器の稼働を不可とする個人鍵(パーソナルキー)を採用し、トンネル内には非常停止ボタンを複数設置するなど冗長性の高い安全管理(インターロック)システムを採用し、運転開始前には区域全体の無人点検を行い、安全に関するマニュアル・手順を詳細に定め、定期的に確認する等管理を徹底します。

 

ILCでは「ビッグバンを再現」すると言っていますが、危険ではないのですか?

ILC の実験の例えとしてよく使われている「ビッグバンの再現」という言葉は「ビッグバンの少し後に起こっていた素粒子の反応を再現する」という意味です。ILC によって「ビッグバンを再び起こす」ことは不可能です。実験では、ビッグバン直後の状態での素粒子反応の痕跡を測定器で捉え、データを集めて解析を行います。

 

ILCでの研究でブラックホールが出来ることはありますか?もし出来てしまった場合どうなるのでしょうか?

現在提案されているいくつかの理論によれば、加速器実験によって「ブラックホール」と同様の現象を観測できる可能性があります。しかし、その「ブラックホール」は宇宙の大きなブラックホールとは異なり、ヒッグス粒子などと同じように極めて小さく、同じように瞬時に消えてなくなるものです。

また、高エネルギー加速器で創り出す高エネルギーの素粒子反応は、人工的につくり出すことのできる最高のエネルギーですが、このような反応は、地球の大気上でも、宇宙の至る所でも、宇宙の創成期より、数え切れないほどたくさん起こっています。ILC でブラックホールができても全く無害なことは、私たちの宇宙、地球の存在が証明しています。

 

ILCの運用期間(実験期間)が終わったら、ILCのトンネルは、核廃棄物の最終処分場に使われるのではないですか?

「特定放射性廃棄物の最終処分に関する法律」では、原子力発電で発生する使用済核燃料に起因する高レベル放射性廃棄物の最終処分は地下300 メートルよりも深い地層に埋設処分(地層処分といいます)することとなっており、海抜約110 メートルの深さに設置されるILC のトンネルは、深度50~100 メートルが多いなど地表に近いこと、施設の形状も埋設に適したものでないことなどから、地層処分に転用されることはありえません。

また、法律においては、候補地選定の調査に当たり、事前に地元自治体の意見を聞き、十分に尊重しなければならないと規定され、国は、地元自治体が反対の場合には手続きを進めないとしています。これに関して、岩手県や建設候補地の自治体も核廃棄物の最終処分場への転用を認めないと明言しています。

何より、ILC は世界の国々が協力し、費用を負担して建設・運用する国際プロジェクトで進める実験施設であり、日本が独自にその利用方法を決めることができるものではありません。

なお、他の加速器研究施設の例を見ると、初期の研究目的が達成された後も新たな物理研究の目的が掲げられ施設は継続して利用されています。ヨーロッパのセルンも、建設から60 年を経過した現在も新たな研究が行われています。

 

地震が起きても大丈夫なのですか?

常時の地震発生時には、加速器はそれを検知して直ちに停止し、その後、速やかに運転が再開される仕組みになっています。なお、現在大型加速器が稼働している茨城県も地震頻度が高い地域ですが、問題なく大型加速器を運転しています。

超巨大地震に関して、地下施設の場合、地震の振幅は地上に比べ地下では1/2~1/4 になることがわかっており、影響はきわめて小さいと考えられています。また地上施設は、震度7(阪神淡路大震災の震度)に充分耐えうる耐震設計がなされます。

 

ILC建設による地下水への影響はないのです

 ILC が建設される花崗岩帯は、地下水への影響は極めて少ないと言われていますが、ILC 候補地においても、トンネル坑内湧水量の予測に有益な知見を得ることを目的とした調査を実施しています。

また、着工前にあらためてトンネル掘削工事による地下水への影響を予測・評価し、必要な対策を充分に講じることとしています。

 

地域との関わりについて

ILCの建設・運用時に地元の人は何をすれば良いのですか

 まず、ILC の価値や意義について正しく理解していただくことをお願いしたいと考えています。

 ILC が建設されると、多くの外国人研究者が訪れ、居住することが考えられますが、文化習慣の違う人々と同じ地域の住民として日常的にふれあいながら一緒に暮らしていくことになりますので、ぜひ温かく迎えていただければと思います。

 

 

Tohoku Conference for the Promotion of the ILC