ILCの学術的意義とイノベーションについてあらためて理解を深めていただくことを目的に、11月25日に仙台市内ホテルを会場に、オンライン配信も併用してILC講演会を開催しました。
冒頭、協議会共同代表の大野英男東北大学総長の挨拶で、7月に再開された文部科学省の有識者会議など、ILCに係る最近の動向や、ILCが素粒子物理学のパラダイムシフトをけん引する極めて重要なプロジェクトであることを述べられました。
その後、ILC研究者コミュニティがILCをより強力に推進していく組織として6月に設立した「ILCジャパン」の代表である浅井祥仁氏にお話しいただきました。
○講演 ILCの学術的意義とイノベーション~唯物論から唯空論へ~
講師 ILCジャパン代表 東京大学素粒子物理国際研究センター センター長 浅井 祥仁 氏
20世紀の学問の中心は物質で、素粒子の研究も物質を中心に進んできた。21世紀に入り、ヒッグス粒子の発見は、空間は空っぽではなく、ヒッグス場が存在するということの証拠となった。さらに重力波が発見され、物質を取り囲む空間や時間といった背景が変化することでこの宇宙が生まれたことが分かった。このような新たな発見により、21世紀の学問は、物質ではなくその「周り」が主人公となるという意味を込めて私は「唯空論」という言葉を使っている。
そのヒッグス粒子の性質を調べるためにILCが必要であり、ILCにはより高度な加速器技術が求められる。放射光施設やがん治療への活用に加え、新しい半導体を作るための光源、量子コンピューターやAIへの活用も議論される等、様々な分野へのイノベーションが期待される。
ILCの日本誘致により、科学とイノベーションで日本を変えていきたい。ただ科学者だけでは実現できない。産業界、経済界、地域と一緒に進めていくフレームワークを作っていきたい。
浅井 祥仁氏
最後に、協議会共同代表の高橋宏明東北経済連合会名誉会長から、「『ILCジャパン』が、新たな我が国の研究者コミュニティの顔として、ILCの実現に全力で取り組んでいることを実感できた。引き続きILCジャパンを含めた関係機関の連携のもと、会員の皆様のご支援、ご協力を得ながら、協議会としてILCの実現に向けて更に努力していく」と申し上げ、終了しました。