ILC準備研究所の設置に向けた検討を進めているILC国際推進チームの活動状況を紹介し、ILC日本誘致に向けた機運醸成を図る目的で、3月23日にILC講演会をオンラインで開催しました。
冒頭、協議会共同代表の大野英男東北大学総長の挨拶では、ILCの誘致が、「持続可能で豊かな未来社会へ向けた変革とイノベーションの先導」、「科学技術イノベーションによる地方創生、震災復興」等につながり、さらにはアフターコロナの世界においても重要性が増していることを述べられました。
その後、ILC国際推進チームの取り組みについて、同チームの議長、ワーキンググループ部会長として活動されている次の3名からお話していただきました。
○講演1 ILC国際推進チームの取り組み状況
講師 ILC国際推進チーム 議長兼ワーキンググループ1部会長 中田 達也 氏
(スイス連邦工科大学ローザンヌ校名誉教授)
現在、準備研究所の組織・設立手順や、必要な予算・人材等についての素案をまとめる準備を進めていることや、建設コストを確定させるためには、遅くとも準備期間(2022年~4年程度)の中頃までに、建設地の場所を正式に決定する必要があることを紹介されました。そのためには、日本でのILC建設が国際的な支持を得ている中で、日本政府が前向きな姿勢を示すことが重要である旨を話されました。
中田達也 氏
○講演2 ILC加速器の検討状況
講師 ILC国際推進チーム ワーキンググループ2部会長 道園 真一郎 氏
(高エネルギー加速器研究機構 応用超伝導加速器センター センター長)
加速器施設の建設に向けた技術的な課題解決についての検討を進めており、今後さらに、ILCを形成する拠点研究所のインフラ準備や、技術設計、土木詳細設計に取り組んでいくことを紹介されました。その中で、超伝導加速空洞を国際分担しながら大量生産する体制を整備することや、準備期間の人材育成が非常に重要であることを語られました。
道園真一郎 氏
○講演3 ILCの科学的意義と測定器の準備状況
講師 ILC国際推進チームワーキンググループ3部会長 村山 斉 氏
(カリフォルニア大学バークレー校 教授)
ILCは、宇宙が誕生したビックバン直後の反応を再現して、宇宙の始まりや終わり、何でできているのか、さらにはなぜ我々が存在するのか等の答えを見つけるための施設であることを、喩えを用いて分かりやすく説明されました。また、最短で2026年の建設開始と併せ、検出器も整備することから、逆算すると1年後にはどのような検出器を整備するか具体的な提案を行って、議論を始めることが必要となり、ワーキンググループを拡充して取り組んでいることを語られました。
村山斉 氏
最後に、協議会共同代表の高橋宏明東北経済連合会名誉会長から、国際推進チームの活動を通じて、世界の素粒子物理学者が「一つ」になって、ILCを着実に推進しようとしていることを実感できた講演であり、引き続き会員の皆様のご支援、ご協力を得ながら、協議会としてILCの実現に向けて更に努力していくことを申し上げ、終了しました。