ILCの学術的意義とイノベーションについて理解を深めていただくことを目的に、2月18日に仙台市内ホテルを会場に、オンライン配信も併用してILC講演会を開催しました。
冒頭、協議会共同代表の高橋宏明東経連名誉会長の開会挨拶では、文部科学省の有識者会議において、2月に「議論のまとめ」が公表され、「ILC準備研究所への移行は時期尚早」とする一方、「次世代加速器開発に向けた重要な技術課題等を、関係国研究機関が適切に役割分担し、段階的に展開していくべき」とされたことや、ILC推進議員連盟が開催され新会長に塩谷立衆議院議員が就任したことなど、ILCに係る最近の動向について紹介いたしました。また、事務局より有識者会議「議論のまとめ」の概要について報告しました。
その後、素粒子物理学者であり、現場の最前線で量子コンピュータやAIの研究に関わられている東京大学素粒子物理国際研究センター助教の飯山悠太郎氏にお話しいただきました。
○講演 素粒子物理学と量子コンピュータ・AI ~ILCとイノベーションを考える~
講師 東京大学素粒子物理国際研究センター 助教 飯山 悠太郎 氏
これまで自然科学では実験と理論が2本の柱だった。これに加え計算機によるシミュレーションが第3の柱、さらには、機械学習AIが第4の柱とも言われるようになってきた。このシミュレーション、AIに現在開発されている量子コンピュータを利用することを研究している。
量子コンピュータは、これまでのコンピュータでは膨大な時間がかかっていた計算を一瞬で行うことが可能となる。
こうした研究の中で出てくるキーワードが「量子AI」である。AIは確率分布を推定する機械であり、その分布を高次元のパラメーターで計算する際に、量子コンピュータを使うことが出来れば、大量のデータ処理により新しいデータの相関関係等、新たな知見が得られることが期待されている。
ILCでは、電子・陽電子を衝突させ、そのデータを全て記録することで、ヒッグス粒子の性質を解明することはもちろん、我々が思っても見なかったものがそこに潜んでいるかもしれず、量子AIへの期待は大きい。
こうしたイノベーションにより、量子AIが進展すれば、超伝導や磁性体などのマテリアル、バッテリーや創薬などにも大きな可能性が広がる。量子AIを活用したシミュレーションに進むことで、人類が新しい物質を発明するすべを得る、それは本当に革命的なステップであり、その先にある世界は想像するだけでわくわくするものになっている。
飯山 悠太郎 氏
当協議会では、こうした科学技術の最先端に係る研究も注視しつつ、研究者コミュニティや関係機関との連携を一層強化し、ILC計画への理解が深まるよう、さらなる普及啓発に向けた活動等に取り組んで参ります。