1月23日に、仙台市内ホテルを会場に、高エネルギー加速器研究機構(KEK)の山内正則機構長がILCについての講演を行いましたので、その概要についてお知らせします。
岩手県、宮城県の両県議会では、「岩手県議会・宮城県議会国際リニアコライダー建設実現議員連盟」を組織し、ILC実現に向けた取り組みを展開しています。今回、活動の一環として、同議員連盟所属議員及び仙台市議会議員を対象に、ILCの最新状況への理解を深める目的で、KEK 山内機構長を講師に迎えた講演会を開催し、55名が参加しました。
はじめに、同議員連盟の代表である菊地恵一宮城県議会議長、五日市王岩手県議会議長からのあいさつ、来賓である宮城県 池田敬之副知事からのあいさつの後、山内機構長の講演が行われました。講演内容は次のとおりです。
○講演 国際リニアコライダー計画の現状
講師 高エネルギー加速器研究機構 機構長 山内 正則氏
ILCは技術的な完成度が高い計画ではあるが、建設への着手までに解決すべき技術課題が残されている。こうした課題解決に向け、各国の研究機関が協力する組織「ILCテクノロジーネットワーク」の発足に向け取り組んでいる。この組織は、国際推進チーム(IDT)が既に検討を行った18の作業項目について、各国の研究機関が国際協力により実施する研究者間のネットワークである。
日本とIDTの代表団が欧米の研究機関を訪問し、同ネットワークへの参加、役割分担、協定の取り交わしに向けた協議を行っており、2023年4月の発足を目指している。
また、IDTが主催して国際有識者会議を開催している。この会議は国際的共同研究の経験が豊富で、各国政府との対話チャンネルをもった研究者によって構成されている。大型加速器建設を国際協力のもと実現させる際の課題等を整理し、実現に向けたシナリオ作成を目指しており、これが完成した時点で各国政府関係者への説明、議論の場を設けていく。
今後の方向性については、新型コロナウイルス感染症の影響や、ウクライナ侵攻等の国際情勢の悪化等の現状から、世界でもILC実現を直ちに受け入れる状況でないと認識している。今後日本政府がILC誘致を提案した際に、各国が多額の拠出を伴った参加検討してくれる時期が来るまで、国際協力による技術の完成度を高め、各国研究者研究機関と連携強化によるILC実現に向けた機運醸成、各国政府の理解促進等に取り組んでいく。FCC-ee(ヨーロッパで検討している次期円形加速器)の実現可能性調査の結論が出る2025年が、こうした取組を続ける時期として一つのめどと考えている。
コスト面や技術的な成熟度を踏まえるとILCの実現可能性が最も高く、説明した取組を中心に今やるべきことを着実に積み重ねることが、ILC実現につながる最善の道と考える。
ILC計画の実現に向け、国際的な取組が着実に進んでいることが理解できた講演であり、当協議会では、同議員連盟や研究者コミュニティや関係機関との連携を一層強化し、普及啓発活動等に取り組んで参ります。